車両保険で全損なら買い替え費用は保険会社から原則もらえます
自損事故や追突事故を起こしてしまい、愛車が大破。保険会社に全損になると言われたけど、今いちよく分からない。
私は保険会社の事故担当者として現場で働いていましたが、全損という聞き慣れない言葉に戸惑う契約者様は多くいらっしゃいました。
全損とは、「修理費＞車両保険金額」の状態で、車両保険は契約時に定めた車両保険金額が限度となります。
そのため、例えば、車両保険金額が100万円で修理費が120万円なら全損となり、保険会社から貰えるのは100万円となります。
これが車両保険における全損です。
被害事故で全損になった場合は、考え方が異なりますので、被害事故で全損になった際は、以下のページをご参照ください。
実際にもらえる金額は（車両保険金額＋車両保険金額×10%）
全保険会社共通で、車両保険で全損の場合には、全損時諸費用保険金特約といって20万円を限度に車両保険金額の10%がプラスされます。
要は、車を買い替える際にかかる諸費用に使ってくださいということです。
例えば、車両保険金額が100万円なら、実際には110万円があなたの手元に入ります。
全損時諸費用保険金特約（車両全損時諸費用特約）は自動付帯で加入しているのが一般的ですが、ソニー損保などのダイレクト型自動車保険では任意加入のケースがあるので、ご自身の保険証券をチェックしてください。
また、新車が全損になった場合は、車両保険金額以上が保険でおりることもあるので、詳しくは以下の記事をご確認ください。
車両保険、全損時の手続きの流れ
- 保険会社が事故車を査定
- 保険会社からの全損通告&支払額案内
- 車内の私物を回収した上で、保険会社が車を引き取り
- 保険請求書に口座番号を書き、保険会社から指定の口座へ振込してもらう
一般的な全損手続きの流れは上記となります。
ローンがある場合は所有者に車両保険が支払われる
保険会社は全損の際、所有権が誰にあるかを車検証で必ず確認します。その際、所有権がローン会社になっている場合は、まずローン会社に支払う手続きをします。
例えば、保険会社から100万円の支払いで、ローンが80万円残っているなら、80万円はローン会社、20万円はあなたへの支払いとなります。
滅多にありませんが、車両保険で残りのローンを完済できない場合は、残りのローンは全額一括払いで返済する必要が出てきます。
車両保険では所有権が保険会社に移り、車も保険会社が引き取る
全保険会社共通で、約款には車両保険で全損保険金を支払う場合は、保険会社に所有権が移り、車も保険会社が引き取る決まりとなっています。
これは、原則絶対なので、保険金を受け取る前に勝手に車を売ったり処分してしまうと、保険金を受け取ることができないのでご注意ください。
外付けカーナビやドライブレコーダーなども保険会社に所有権がうつることとなりますが、引き上げ前に取り外して何か問題になるということは原則ありません。ただ、何か言われるケースがゼロではないので、取り外すなら保険会社の人間が確認する前に取り外しておきましょう。
修理希望を伝え自ら廃車することで得になることもある
これは裏技ですが、保険会社からお金だけもらって廃車手続きを自らすることで、より手元にお金を残せるケースがあります。
稀にあるのですが、全損でもどうしても修理したいというお客様がいます。その場合、保険会社は引き取った車の売却予定金額を差し引いて全損金額を支払います。
所有権は保険会社に移りますから、売ろうが何しようが保険会社の自由となります。
保険会社は事故直後に車をチェックしたらすぐ、提携業者に車の残存価値の査定を出してます。要は、車を引き取らないから残存価値分は引かせてねということです。
例えば、車両保険の支払いが110万円予定で残存価値が5万であれば、105万の支払いとなります。
もちろん、これは修理希望のケースに行っていた対処法でしたが、保険会社は支払いした後に実際に修理をしたかどうかまではチェックしていません。
なので、修理せずに車を廃車なり売却するなりしても、特にお咎めを受けることはありません。修理段階で修理工場からやっぱり修理できないと言われて車を廃車したと言えばそれでお終いですからね。
グレーなやり方ではありますが、もし車が10万円で売れるのであれば、上記の例で言えばトータル手元に残るお金は115万円なわけですから、5万円得することとなります。
強くおすすめできる方法ではありませんが、気になるようでしたら全損車がいくらで売れるかだけでも調べてみるといいかもしれません。
尚、全損車でも残存価値があるのが基本なので、廃車するのではなく売却することがポイントです。廃車はよくて0円ですが、売れば10万円になることも稀にあります。
なぜなら、使えるパーツを海外に輸出し、商売をしている会社が多いからです。日本車の部品は海外で高値で取引されています。
そのため、売れば車両保険よりもお金を手元に残せる可能性があるので、高額買取で有名カーセンサーを使い、とりあえず、査定してみてみましょう。
（※車の状態は「走らない」を選択してください）
その他、全損時の疑問解決
修理する場合、車両保険金額以上の金額の保険がおりることはない？
車両超過修理費用特約に加入していた場合、全損で「車両保険金額+30万〜50万」以内であれば、修理する場合に限り、全額保険で支払ってもらえます。
30万〜50万という金額は、各保険会社によって異なります。
このケースを除き、修理する際に車両保険金額以上の金額が保険でおりることはありません。
免責がある場合、車両保険は全額支払われる？
支払われます。全損時は免責は除外されるので、ご安心ください。0-10の2回目の事故でも、10-10、20-20の免責設定でも同様です。
わざと全損にすることはできる？
できるかもしれませんが、絶対にやらないでください。保険会社は現在、保険金詐欺に対して非常に厳しくチェックしています。車の傷の流れが事故との整合性がなければ、徹底的に調べられて警察沙汰になりかねません。
自賠責保険や自動車税の還付金はどうなる？
原則返ってきます。手続書類については保険会社の提携業者から郵送されます。詳しくは、提携業者から電話きますので、その際に確認してください。
まとめ
車両保険の場合、被害事故と違って全損金額を交渉で引き上げすることもできませんので、考えるのは修理するか買い替えか。買い替えなら、保険会社に処分してもらうか自分で処分するかでしょう。
ただ、経験上、車両保険で全損になった際、100人のうち98人は保険会社から車両保険を受け取って解決しています。
理由は、手続きが楽というのもありますが、みなさん自分で車を売却できるという事実をご存じないからです。
また、今回の事故で保険料も上がるでしょうから、現在、代理店型の自動車保険にご加入であれば、これを機にダイレクト型自動車保険で加入するのも一つかもしれません。