【全損】時価額請求の判例まとめ

【全損】時価額請求の判例まとめ

 

被害事故で全損になった場合、なぜ保険会社はレッドブック価格で提示してくるのか?

 

その理由は、実際の裁判で根拠ある基準として認められているからです。但し、裁判ではレッドブックの中古車小売価格を基準に算定すべきと明示されているわけではありません。

 

今の全損賠償は昭和49年4月15日の最高裁の判決を基準に決められているわけですが、その判決では、「車両時価とは事故車と同一の車種・年式・型・走行距離等の中古車小売価格」という表現に留められています。

 

要は、中古車小売価格をどのように算出したらいいかまでは明示されていないんですね。

 

だから揉めるのですが、現在の基準で主な算出根拠として認められているのは以下の3つです。

 

  • レッドブックの小売価格(初度登録10年以内の車)
  • 新車価格の10%(減価償却法:初度登録10年以上前の車)
  • 中古車市場価格(インターネットや雑誌情報)

 

ですが、上2つで算出される金額は低価格です。そのため、以下のような判決もありますが、保険会社との示談交渉では3つ目の基準で算出し、交渉することがキーポイントとなります。

 

「インターネットで個別の中古車の販売のため掲載された価格は、中古車の小売価格の参考とはなるが、必ずしも標準的な現実の小売価格を反映しているとは限らない」

 

【東京地判H18-10-11(1)交通民集第39巻5号1443項】

 

私が保険会社の担当だったとき、中古車市場価格よりレッドブック価格のほうが高いということはまずなかったので、このページでご紹介する判例を交渉材料として使い金額UPにお役立てください。

 

 

レッドブック価格を採用した判例

 

裁判所 東京地判H14-9-9
事件番号 平23(ワ)第23505号
出典 交通民集35巻6号1780頁
原告主張 440,000円(インターネット)
被告主張 250,000円(新価の10%)
判決 380,000円(レッドブック)

 

有限会社オートガイドの自動車価格調査サービスによれば、甲野車と同一の車種・年式・型の自動車はの平成13年2月時点における小売価格は38万円である。この点、原告花子提出するインターネットによる中古車情報には、甲野車と同一の車種・年式・型・排気量の自動車について、上記学を上回る価格のものが見受けられるが、インターネット検索の場合には、検索条件の設定いかんによって抽出される車両の範囲を変えることが可能であり、これをもって、直ちに車両時価額を認定することはできない。

 

 

新車価格の10%を採用した判例

 

裁判所 東京地判H17-11-22
事件番号 平16(ワ)第20397号
出典 未公表
原告主張 230,000円(新価の10%)
被告主張 時価
判決 230,000円(新価の10%)

 

※争われているのは過失大の加害者である被告の全損時価額です。

 

本件事故当時の被告者の同年式・同車種の車両の価格については、有限会社オートガイド自動車価格月報における掲載期限を経過していること、被告者と同年式・同車種の車両価格については、平成17年4月20版の中古車情報誌には25万円と掲載されているが、減価償却法により残価率10パーセントとして算定すると23万円程度となることが認められる。

 

 

中古車市場価格格を考慮した判例

 

裁判所 神戸姫路支判H14-9-4
事件番号 平13(ワ)第20675号
出典 未公表
原告主張 424,500円(中古車4台平均値)
被告主張 200,000円(レッドブック)
判決 350,000円

 

(多くの車両情報が掲載された中古車情報誌も、車両時価額の認定の際の参考資料となり得ると述べた上で)一般に不法行為に基づく損害賠償に係る損害額認定において、被害者側にとって控えめな算定方法を採用せざるを得ない側面があることをも考慮すると、本件車両時の時価額は、車両本体のみの価格35万円、その消費税相当額1万7,500円と認めるのが相当である。

 

 

全損時価額請求のまとめ

 

「自動車価格月報(レッドブック)は、同車種、同形式の車両に関する数多の取引事例の調査結果が反映したものとして一定の合理性のある有力な証拠資料と評価できるのであって、本件事故時における原告者それ自体の市場価格を明確に認定するに足りる証拠がない現況下では、これをもとに原告者の再調達価格を認定するのもやむを得ない」

 

【東京地判H13-12-26(4)交通民集34巻6号1689頁】

 

近年、インターネット情報が考慮されつつありますが、上記の通り、レッドブックが裁判で最も信頼されている算出根拠であることは疑いようのない事実です。

 

但し、これはあくまでも裁判での話であって、保険会社との交渉においては根拠ある請求であれば認められる可能性は十分考えられます。

 

私も保険会社時代、インターネットや中古車雑誌を算出根拠として示談したことも多々ありました。

 

なので、納得できなければ、とりあえずネットなどで調べて自分で車両時価は○○円と請求するようにしてください。無料で調べられますからね。

 

ネット情報を使った、具体的な請求方法については以下のページで解説していますので、ぜひご参考にしてください。

 

損害賠償において金額請求は被害者側が自ら行う必要があるため、保険会社に「何とかしろ!」と主張するだけでは何も状況は変わりませんよ。

 

 

※その他の裁判例まとめ

 

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